【基本方針】
「羽島青年会議所 サステナビリティトランスフォーメーション5つの取組み」を実現し、組織のサステナビリティと社会のサステナビリティを同期化させる
【基本計画】
- DXを活用した生産性向上と意思決定サイクルの迅速化
- 育LOM宣言による多様な人材が活躍できる環境整備
- 心理的安全の醸成で挑戦できるチームに
- 若者の地域参加促進で、持続可能なまちづくり
- 既存リソースの活用で生み出す、相乗効果と好循環
はじめに
1968年、日本で396番目のLOMとして羽島青年会議所が誕生しました。明るい豊かな社会の実現に向けて、それぞれの時代で地域の課題に寄り添い、様々な事業や運動を展開し続けた先輩方の情熱が脈々と受け継がれ、今年で57年目を迎えることができました。
転勤族であった私が羽島に赴任したのは2020年のことです。当初は、縁もゆかりもない土地で同世代の友人ができたら良いなという軽い気持ちで入会を決め、次の異動までの期間お世話になろうと考えており、理事長を拝命することなど露とも想像していませんでした。しかし、先輩方のまちづくりへの情熱や、ともに事業構築したメンバーの自己実現への想いに触れるたび、「修練・奉仕・友情」のJC三信条を肌で体感した私は、羽島を離れた今も羽島青年会議所に関わり続けています。
現在、私は横浜を拠点に生活や仕事をしており、羽島青年会議所が羽島郡市との唯一のつながりといっても過言ではありませんし、言葉を選ばずに言えば、よそ者と言えるのかもしれません。しかし、逆説的ではありますが、そうした立場だからこそ、羽島青年会議所が100周年、150周年と活動を継続していってほしいと強く感じるのです。私自身が今後羽島郡市における明るい豊かな社会の実現にどれほど貢献し続けられるかは明確ではありません。しかし、羽島青年会議所が継続していくかぎり、先輩方の情熱を脈々と受け継ぎながら、JC三信条を肌で感じ、明るい豊かな社会の実現に向けて、それぞれの時代の課題に即した事業や運動を展開していくメンバーが多く輩出されることでしょう。だからこそ、本年度理事長として、羽島青年会議所が本当の意味で持続可能な組織へ変革を遂げられるよう尽力することを決心しました。
しかしながら、持続可能な青年会議所は容易に達成できるテーマではありません。青年会議所の会員数は毎年前年比3%ずつ減っているほか、会員の平均年齢も上がり、毎年約30のLOMが閉鎖を余儀なくされています。2019年の京都会議で鎌田長明会頭(当時)は、「このままでは10年後にメンバー数が1万人を切り、会議所数は半分になっていてもまったくおかしくない」と危機感を示しています。2023年時点で、全体の6割にあたる約400LOMが会員数20名を切っており、当時の鎌田会頭の危機感が決して杞憂ではなかったことを裏付けています。羽島青年会議所の現在の会員数は18名であり、今後も継続していけるか、それとも消滅可能性LOMに分類されるのか、まさに瀬戸際であると言えるでしょう。
VUCAの時代とSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)
持続可能な組織の形成に向けて、まずは我々が置かれている環境に目を向ける必要があります。昨今、現代はVUCAの時代であると多くの場所で語られるようになっています。VUCAとは、一言でいうと「先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態」を意味します。昨今の変化が激しく先行き不透明な社会情勢を指して、ビジネス界においても急速に使われるようになりました。VUCAは、以下の4つの単語の頭文字を取った造語です。
V(Volatility:変動性)
U(Uncertainty:不確実性)
C(Complexity:複雑性)
A(Ambiguity:曖昧性)
経済やビジネス、個人のキャリアに至るまで、あらゆるものが複雑さを増し、将来の予測が困難な状態にあります。こうした時代で組織が生存していくために必要なものとして、多くの専門家は2つの視点が必要だと論じています。1つは、環境変化に応じた柔軟な適応と、それを担う多様性の高い人材やテクノロジーへの理解。そして、2つめは、多種多様な人材が共感し、まとまるための、組織として譲れない理念です。変革と多様性が求められるVUCAの時代において、多くの企業がこうした視点を経営に取り込んでいます。
そして、こうした不確実性の時代において、多くの企業が取り組んでいるのが、企業は持続可能性を重視した経営戦略への転換、いわゆる「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)」の実現です。経済産業省経済産業政策局の「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会」によると、SXの実現に向けて必要なことは、「企業のサステナビリティ(稼ぐ力)」と「社会のサステナビリティ(社会課題、将来マーケット)」の同期化であるとしています。平易な言葉で言い換えれば、企業は他社との競争でどのように利益を得るかという視点だけではなく、同時に社会課題の解決を組み込んだ戦略立案をしなければ、持続可能性を失うということです。なぜならば、経済活動の基盤である市場や社会が存在してはじめて、企業は存続が可能となり、また自社のステークホルダー(利害関係者)に良い印象を与えることで信用の獲得につながるという現実的な視点もあります。このように、多くの企業が持続可能性を重視した経営戦略への転換を図っています。
羽島青年会議所におけるSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)
では、こうした社会状況を青年会議所に置き換えて考えてみましょう。青年会議所を取り巻く環境はまさにVUCAそのものです。少子高齢化による若年人口の減少、都市部への人口流入や一極集中、新型コロナウイルスの感染拡大を契機とした、個人の価値観や働き方の多様化といった不確実な外部要因が、青年会議所の会員数減少の要因となっていることは間違いありません。我々羽島青年会議所も持続可能性を重視した経営戦略への転換を迫られていると言ってもよいでしょう。
そして、組織のサステナビリティと社会のサステナビリティという視点でも考えてみましょう。JCにとって組織のサステナビリティとは、言うまでもなくメンバーが集まり、メンバーが辞めないことです。つまり、組織のサステナビリティとは、言い換えればJayceeのサステナビリティであります。一方で、社会のサステナビリティは少子高齢化による若年人口の減少、都市部への人口流入や一極集中といったリスクへの解決策や、個人の価値観や働き方の多様化といった事象をリスクからオポチュニティーに転換していくことです。そして、組織のサステナビリティと社会のサステナビリティの両方に資する取組にリソースを集中的に投下する。これが羽島青年会議所におけるSXであると私は考えます。
モーレツJCからプラチナJCへ
まずは、羽島青年会議所における組織の(=Jacyeeの)サステナビリティについて深堀して考えていきます。先ほど挙げた外的な要因が青年会議所全体の会員減少につながっている一方で、青年会議所の構造的な要因も会員減少一因となっています。日本青年会議所2022年度共創グループの分析によると、会員数の減少、歴の浅い会員が相対的に増えたことで、組織運営や意思決定に膨大な時間と労力が掛かっているとしています。羽島青年会議所においても、先輩方が取り組んできた規模感の大きな事業に憧れを感じる一方で、人数が少ない中での事業運営は一人一人の負担感も大きく、負担感を理由とした休会や退会の申し出も発生しています。もちろん、先輩方から脈々と受け継がれた高い志の旗を降ろすつもりは一切ありません。しかしながら、そうした高みにどのような時間と労力で届くのか、生産性という観点をもった組織運営が必要となってきています。
2024年4月の日本経済新聞にて以下のような記事が掲載され多くの話題を集めました。「働きやすさも働きがいも高い企業を「プラチナ」、働きがいが高く働きやすさが低い企業を「モーレツ」、その逆を「ホワイト」、働きがいも低く働きやすさも低い企業を「ブラック」として4つに分類。「プラチナ」が最も売上高の伸び率が高いことを明らかにした。もはやホワイト企業は誉め言葉ではありません。働きやすさも働きがいも高いプラチナ企業が目指すべき組織であり、それが実現可能であることはすでに多くの企業により証明されています。羽島青年会議所はある意味「モーレツ」JCだと捉えることができます。明るく豊かな社会を実現するというやりがいを持ったメンバーの集まりである一方で、時には会議体が深夜に及ぶこともあり、働きやすさ(参加しやすさ)は改善の余地があります。明るく豊かな社会を実現するという高い理想を、先輩方から脈々と受け継いできたことは、我々の大きな強みです。その強みを更に活かし組織の生産性を高めていくため、働きやすさ(参加しやすさ)の改善に踏み切ることで、必ずやプラチナJCとして光り輝くことができると信じています。
現在の事業や運動を維持しなら、組織運営や意思決定にかかる時間と労力を削減していくためには、テクノロジー力を活用していくべきです。ビデオ会議システムやグループウェアを導入し、効率的に活用していくことで、意思決定のプロセスのスピードを高めるとともに、「昨年がそうだったから」という理由だけで存在しているルールは、廃止やデジタルツールの活用で代替できないか検討し、事務的な負担感を減らしていきます。
また、多様な人材が活躍できる環境整備も、参加しやすさの観点では非常に重要であると考えます。そこで、我々羽島青年会議所は「育LOM」(育児世代であるJCメンバーが家庭や仕事、JC活動を平行しながらも活躍できる子育て支援等を積極的に行なうLOM)を目指すことを宣言します。
<育LOM宣言>
一、私たちはメンバーそれぞれの多様なライフステージを尊重し、育児や家庭を優先する事への理解を示します。
一、私たちは、メンバーが家族と過ごす時間を増やすために、効率の良い組織運営を心がけます。
一、私たちは、IT等の先進的な技術を積極的に活用し、事業や会議等へのメンバーの多様な参画方法を模索します。
一、私たちは、出産や育児で休会等を行なっていたメンバーが復会しやすい環境を作り、温かく迎えます。
一、私たちは、メンバーご家族のJC運動に対する継続的な理解を心がけ、そのための取り組みや情報発信を推進します。
一、上記5カ条を理事長はじめ役員が率先して実践し、LOM全メンバー共通の意志としてここに育LOM宣言を行います。
宣言のみに留まらず、2025年度中に日本青年会議所から「育LOM」認定を受けることを目指し、スマート会議の実現や、産前産後休会制度の整備など、具体的な取り組みを進めていきます。
また、組織の生産性を高めていくためには、メンバーのマインドセットを変えていく必要もあります。「組織の誰もが非難される不安を感じることなく、自分の考えや気持ちを率直に表現できる状態」、いわゆる心理的安全性が組織の生産性を高めるうえで最も重要な要素であるということは、多くの調査で証明されています。生活の何もかもが新しい挑戦である幼児にとって、両親がよりどころであるように、羽島青年会議所は挑戦する地域の青年経済人にとってのよりどころであるべきです。羽島青年会議所には年齢、性別、キャリアなど異なるバックボーンを持ったメンバーが集まっています 。そうした中で一枚岩の組織を形成することは決して容易ではありません。しかしながら、それぞれのメンバーがどのような思いで入会し何を成し遂げたいかを、メンバー間で寄り添い理解しあうことで、 誰もが恐怖や不安に打ち勝ちながら、自身の成長や地域のために邁進できる環境を作ることができます。メンバー間での共感と信頼が、単に一体感があるだけではなく、多様性を内包した挑戦できる組織へとつながっていきます。そして、そうした組織は現代の多様な価値観の青年経済人の受け皿になれると信じています。
このような、組織のそしてJayceeのサステナビリティを高めるための生産性向上や組織改革に向けた取り組みは、必ずや地域社会のサステナビリティにもつながると信じています。なぜならば、Jaycee一人一人はJayceeであると同時に、会社や地域社会では青年経済人のリーダーであり、家庭では多くのメンバーが父や母であります。生産性向上や組織改革に過程において得た知見や、新たなにアップデートされた価値観を持って、多様な価値観を受け入れながら、社会に新たな付加価値や革新的なアイデアを産み出していける青年経済人。そして、子育てしながら自己研鑽やリスキリングを実現する子育て世代。こうした人材の育成で、地域社会のサステナビリティに貢献をしていきます。
若者の地域参加促進で、持続可能なまちづくり
次に、我々を取り巻く地域社会のサステナビリティの側から考えてみます。少子高齢化による若年人口の減少、都市部への人口流入や一極集中、新型コロナウイルスの感染拡大を契機とした、個人の価値観や働き方の多様化といった不確実な外部要因は、羽島青年会議所だけでなく、地域全体の担い手の減少という問題にもつながってきます。日本総研が24歳までを対象に実施した「2022若者の意識調査 ―サステナビリティ、金融経済教育、キャリア等に関する意識―」によると、実は現代の若者の社会参加への意識は非常に高いということが分かります。全回答者の52%が環境問題や社会課題への解決意欲を示しており、この結果は過去の水準に比べても非常に高い割合です。これは東日本大震災以降の相次ぐ自然災害や、SDGsの考え方が浸透した結果だと考えられます。一方で実際に日頃社会貢献活動等を行動に起こしているのは21%に過ぎず、地域社会への参加はしたいが、できていないというのが多くの若者にとって現状だといえるでしょう。
また、こちらは若者に限らないデータとなりますが、厚生労働省白書によると、地域社会への参加をしない理由に対して、45%が「どのような活動があるかわからない」と回答したのに対して、「興味や関心がない」との回答は7%でした。さらに、興味深いデータとしては、地域社会の参加をはじめたきっかけへの問に対して、30代以降すべての年代で、「参加している人からの勧誘」「地域内での広報」が上位であるのに対して、20代だけが「オンライン上で活動を知った」が約60%の回答となっています。
これらの数字から、若者は地域参加への意欲はあるが、青年会議所を含めた既存の地域団体が受け皿になれていないと言うことができるのではないでしょう。私たち青年会議所は40歳までという年齢制限が定められた組織だからこそ、青年経済人が地域社会に参加するきっかけを提供する必要があると考えます。事業に参加をしてくれた青年経済人同士が結び付く、また青年経済人が羽島青年会議所だけでなく多くの地域団体が羽島郡市のために活動していることを知ってもらう。このように羽島郡市の青年経済人をつなぐHUB機能を発揮し、青年経済人が主役となり社会の価値観をアップデートしていける社会の実現を目指していきたいと考えます。
若者の地域参加促進は羽島青年会議所だけで成し遂げられるものではありません。羽島郡市には竹鼻まつりやぎふ羽島駅前フェスのように、地域内の多様な主体の協同による形成される社会的な資本が存在しています。こうしたイベントに積極的に参画することで、羽島青年会議所のHUBとしての機能を最大化していきます。また、多くの地域団体の交流の取組を引き続き継続してきます。すべてをゼロから産み出すのではなく、既存のリソースや既存の協力体制を活かして、相乗効果と好循環を創り出していきます。
<羽島青年会議所 サステナビリティトランスフォーメーション5つの取組み>
このように、組織のサステナビリティと社会のサステナビリティの両方に資する取組にリソースを集中的に投下し羽島青年会議所におけるSXを実現していきます。そして、その具体的な取り組みとして、「サステナビリティトランスフォーメーション5つの取組み」を掲げます。そして、それぞれの取組がどのように組織や社会のサステナビリティに貢献できるかは、以下の図表のとおりです。
①DXを活用した生産性向上と意思決定サイクルの迅速化
①-A ビデオ会議システムやグループウェアの導入
①-B スマート会議の導入(ビデオ会議、議事録自動文字起こし、議題ごとの時間設定、終了時間厳守)
②育LOM宣言による多様な人材が活躍できる環境整備
②-A Family Day(家族に感謝を伝える催し)の開催
②-B 子連れJayceeへの斟酌
②-C 産前産後休会制度の整備(男女問わず)
③心理的安全の醸成で挑戦できるチームに
③-A 組織の心理的安全性向上に取り組む
④若者の地域参加促進で、持続可能なまちづくり
④-A羽島郡市の青年経済人をつなぐHUB機能の発揮
④-B青年経済人が価値観をアップデートできる機会の提供
⑤既存リソースの活用で生み出す、相乗効果と好循環
⑤-A竹鼻まつりやぎふ羽島駅前フェスへの参画
⑤-B OB会や各種地域団体との積極的な交流

岐阜ブロック協議会アカデミー事業の主管
2025年度は岐阜ブロック協議会アカデミー事業を主管します。ブロックの大規模事業を主管することは、羽島青年会議所のメンバーにとって大きな学びの場となります。主管開催の成功に向けては、出向メンバーのみならず羽島青年会議所メンバー全員が一致団結し取組でいく必要があると考えます。そのため、2025年度はLOM内にブロック事業準備室を設置し、岐阜ブロック協議会とコンセサスを形成しながら、メンバー全員で情報共有や意見交換をしながら、アカデミー事業を成功に導くと共に、岐阜会議やブロック大会といったその他のブロック事業にも多くのメンバーが出席し学びを得てもらいます。
Sustain Your Way
そして、最後に本年度スローガン「Sustain Your Way」について説明します。Sustainにはこれまで言及してきた通り、維持するという意味です。そして、Wayには①道、②やり方、といった意味があります。私はスローガン、「Sustain Your Way」に2つのメッセージを込めたいと思います。一つは、先輩方が切り開き、今私たちが歩み、そして次の世代につなげていくこの「道」を絶やさないということです。先輩方の情熱を脈々と受け継ぎながら、JC三信条を肌で感じ、明るい豊かな社会の実現に向けて、それぞれの時代の課題に即した事業や運動を展開していくメンバーが多く輩出されていくよう、羽島青年会議所におけるSXを実現してまいります。そして、二つ目は「あなたのやり方で続けて欲しい」ということです。私たちはJayceeである前に、一人のビジネスマンであり、一人の趣味人であり、一人の父や母です。仕事も家庭も趣味も育児もJCも諦めない。JCのために何かを諦める必要はありません。メンバー全体でどうやったらJC三信条の魅力をそのままに、高い生産性で取り組めるか一緒に考えていきましょう。そして、そうしたそれぞれの人生の多様性が、必ず羽島青年会議所に、新たな付加価値をもたらしてくれると信じています。